【安藤直人】
あともう少しだ。
足を前に後ろにとステップを踏めば、確実に円は回る。
これは競技じゃない。
紅白バラバラで、ほんの僅かな時間ではあるが、女子と手を取り合って踊る。
全ての女子と__。
「ねぇ、安藤くん」
寺脇リカが、上目遣いでこっちを見ていた。
「私と組まない?」
「組む?」
「そう。安藤くんとなら無敵だな。お互い同盟を組んで、他の奴らを落とそうよ」
「断る」
「じゃ、いつまで自分に投票する気?それがいつか、自分の首を絞めることになるわよ」
ニンマリ笑いながら、お互いお辞儀をする。
そう、こんな会話ができる時間なんだ。
最も、リカと話すことは何もないが__。
次の女子の手を握る。
それまではどこか遠慮がちだったが、今回ばかりは力一杯握った。
「安藤くん」
「涼子」
「やっと会えた感じがする」
「そうだな」
右、左、右、左。
無情にも流れていく音楽。
時間が止まればいいと、本気で思った。
もし涼子と話す時間があれば、もっと色々と言いたいことも聞きたいこともあったのに、いざその時がくると、呆気なく終わってしまう。
「だ、大丈夫か?」
「うん」
はにかんだ笑顔を見せ、涼子がお辞儀をする。
その手を俺は、限界まで離さなかった__。



