「それでは始めます。よーい、スタート‼︎」


合図とともに、立ち上がった。


足の踏み場は3つある。樋口と木崎と伊藤だ。中でも最も小柄な伊藤明日香を真ん中にし、そのうち2つを足場にする。


女子の背中に乗るだなんて__普段の運動会でもあり得ないことだ。


なんだか脆くて頼りない。


でも隙間がない分、立っていられやすいのは確かだ。


同じ目線に立つのは、相手チームの相原友子だった。


紅白お互い向き合う形で、2つのピラミッドが対峙している。


1つだけ大きく異なるのは、紅組の中段が1つ足りないということ。


中央に体を寄せてはいるが、2人の間には隙間ができている。


なので寺脇リカと久米茜の背に乗る相原は、かなり大きく股を広げていないと立っていられない状態だった。


このハンデは大きい。


「ちょっと寺脇さん‼︎動かないでよ‼︎」


「動いてないわよ‼︎」


そんな言い争いが聞こえてくる。


これは時間の問題かもしれない__なんていう淡い期待は、時間とともに消えていった。


相原もバランスを掴んだようで、フラつくことはなくなり、向かい合って組体操は続いていく。


「おい、なんだこれ?」


下から裕貴の呆れた声がした。


言いたいことは分かる。


このままじゃ、永遠に勝負がつかないんじゃないか?