【清水奈々】
その目に、力が宿った。
どこか儚げで虚ろだった瞳に、もう私がなにを言ったところで決して揺るぎはしない光が、宿った。
その証拠に、同じ目線で渡り合っているはずなのに、美咲の言葉が遥か上空から聞こえてくる。
一度は、その肩を見下ろしかけたのに__。
なぜか急に吹っ切れたように自信を取り戻した。もう手がつけられない。
美咲は絶対に、屈むことはない。
そのことが、嫌というほど分かった。私は3年間、そうやって過ごしてきたから。
もうここは運動場なんかじゃない。
お城だ。煌びやかな王座から、全てを見通すお城。
敬意を示すために、私は跪かなければならない。
左膝を地面につけ、立てた右膝の上に両手を添える。
さぁ女王様、ここにお足をお乗せ下さい__。
ただ地面を睨みつけ、美咲の右足が浮き上がるのを屈辱的な思いで見ているしかなかった。
だが、美咲の足は受け皿には乗らない。
あえて私の肩を踏みつけ、反動をつけて壁を登っていく。
これは罰だ。
僅かでも歯向った私の自尊心を踏み潰す、罰なんだ。
起き上がることもできず、壁に手をついて項垂れる。
あとは、美咲が1着でゴールするのを祈るしかない。
その時。
「清水さん、ごめん‼︎」
そんな声が聞こえると同時に、再び肩を踏みつけられた。



