【樋口美咲】
「別に屈むの__あんたで良くない?」
奈々の挑むような目力に、私の中のなにかがグラついた。
紅組の2人が、いとも簡単に乗り越えられる壁が、私と奈々ではこうも不落なものとなるのか__。
ここぞとばかりに言葉の槍を放つ、かつての友人は、私が勝手にそう思っていただけ。
恐らくこれが明日香なら、私じゃなくて明日香だったら、協力し合っていたんだろう。
私だからダメなのか。
私だから__。
もうタイムリミットだ。相原友子はもうとっくに壁を超えてしまっている。今、どちらかが折れないと負ける。
手放したくないプライドは、失格者への烙印だ。
私はゆっくりと折った。
膝を腰をプライドを、大きく音が鳴るくらいまで折り曲げることにした。
と、その時、視界の端に、久米茜を捉えた。
いつも野球部のマネージャーとして走り回っている。笑顔を絶やさず、甘える彼らの尻を叩く健全な茜が。
___不健全な笑みを浮かべていた。
それは、まさに私に向けられた侮蔑の微笑みだ。
ふと見上げると、奈々の顔にも同じ勝ち誇った微笑みが、私を熱く見下ろしている。
スーッと私は立ち上がった。
その瞬間、2人の似通った笑顔が強張るのが分かった。



