それでも私たちは動かない。
「久米さん、掴まって‼︎」
壁の上から、相原友子が手を伸ばす。引き上げようというのだ。
属するグループが違うので、それほど仲が良いわけでもない2人だが、お互いが協力し合って淀みがない。
しかも「私はいいから、行って‼︎」と、久米茜が手を払った。
恐らく、揉めている私たちを見て、そう判断したに違いない。
勝てる、と。
「ほら、屈まないと先に行っちゃうわよ?なにも頭を踏みつけようってわけじゃないんだから、手で支えるだけでいいわ」
私も負けるのは不本意だ。
仕方がないから、プライドをへし折るのではなく、優しく撫でてやる。
それでも美咲は動かない。
「もしこれで負けたら、私はあんたに入れるから。明日香だってそうよ、前からあんたのこと嫌ってるし、失格は間違いなしね。それでもいいの?」
グッと拳を握りしめていた美咲が、不意に力を抜いたのが分かった。
__おちた。
常に見下されてきた私は初めて、美咲を高みから見下ろすことができる。
ゆっくりと美咲が膝を折る。
私の目の前で。
膝をつく__。
恍惚が訪れた瞬間だった。



