悪魔の運動会



「奈々、屈んで」


さも当然のように言い、足を上げるのが分かった。


その足を、土のついた汚れた靴のまま、私の背に乗せるというのだ。


踏みつけられる。


中学生活で、私の個性が踏みつけられてきたように。


「早くして‼︎」


女王様が苛立っているのは、自信を無くしているから。


私は初めて、反旗を翻した。


「別に屈むの__あんたでよくない?」


ピクリと眉が動く程度かと思ったら、その綺麗な顔が大きく歪む。


やっぱりもう、女王の気高さはない。


「どっちが屈もうが同じでしょ?ここは学校じゃない。学校だけど、運動会やってんの。地獄のような運動会をね。綺麗さなんて何の役にも立たない」


見る見るうちにその美しい顔が、凍りついていく。


羨望も自信も、嫉妬というベールすらない丸裸の女王様。


「私は屈まないから」


絶対に、あんたに見下ろされたくはない。


もうこれ以上。


私たちは同じ目線の高さで対峙していた。睨み合っているといってもいい。


お互い譲らず動かない。


「相原さん、乗って‼︎」


そこへようやく追いついた久米茜と相原友子がやってきた。


戸田裕貴に捕まっていたが、逃げ果せたらしい。


迷うことなく跪いた久米茜が、両手で相原友子の足を支えて押し上げる。


いとも簡単に壁を乗り越えた。