【安藤直人】
1番に飛び出していった斉木真一は、一発でパンを咥えとった。
その直後だ。
体を引攣らせたかと思うと、喉を掻きむしって地面にのたうち回った。
俺が駆けつけた時にはもう__事切れていた。
「な、なんだよこれ__」
追いついてきた裕貴も、さすがに狼狽えている。
残り7名の走者は、誰もが足を止めた。
斉木が運ばれていっても尚、動くことも喋ることもできずに固まっていた。
それもそうだ。
だって、あのパンの中に__。
呑気にぶら下がっている、アンパン。
「おい哲也、お前、食えよ‼︎」
裕貴が、野々村哲也を小突いた。毒が入っているかもしれないパンを食えと。
「勘弁してくれよ‼︎」
さすがの哲也も、今回ばかりは無理難題だと情けない顔をしている。
お互いを牽制し合うも、どうしてもパンに食らいつくことはできなかった。
「このまま競技続行が不可能であれば、両組に投票して頂きます」
そんな平坦なアナウンスに突き動かされたのは__。
「ざけんなよ。見てろよ‼︎」
手を伸ばしてパンをひっ掴み、一気に口に放り込んだのは、戸田裕貴だった。
頬をいっぱいに膨らませて、挑むように校舎に向かって中指を突き立てる。
「ちなみに、毒が入っているのはたった一つでした」
「早く言えよババァ‼︎」
口からパンを撒き散らし、裕貴が駆けていく。
その後を俺たちは続いた。



