無記名投票。


俺はもちろん、直人に協力する。


俺たちはいつもお互い、競り合って助け合って、良きライバルとしてやってきた。俺が1番に信頼できる親友だ。直人が協力を求めるなら、応えたい。


でも__。


口元を拭うと、手の甲に血がついていた。


裕貴の野郎は、まともに俺を狙ってきた。俺じゃなくても、もし相原がカゴを担いでいても同じだ。あいつは、そんな殊勝なやつじゃない。


だから木崎が示そうという確固たる姿勢も、徒労に終わるんじゃないか?


競技が進むにつれ、1人、また1人と減っていく。


いや、俺たちが減らしていくんだ。


それは同時に、神経まですり減らしていく。


そんな状況下で、直人が言うような理想が通用するだろうか?


みんなに賭けてみたい気持ちは分かる。


分かるが、この口の痛みは消えてはくれない。じんじんとその痛みを増すだけだ__。


「無記名投票、安藤直人」


「無記名投票、相原友子」


「無記名投票、間宮旬」


ここまでは前回の投票と全く同じ。問題はここからだ。


果たして、直人の思いは伝わったのか?


俺はその時を待った。


しかし、次に読み上げられた名前は、俺の想像の範疇を遥かに超えていたんだ。


遥かに__。