【間宮旬】
ここは___暗い湖の底。
泳いでも泳いでも、岸に這い上がれない。
わずかだが、光は見えるというのに。
どんどん明かりからは遠ざかり、体が深く沈んでいく。
「おい、こいつめちゃくちゃ重くないか?」
「これで中3てマジかよ?」
そんな男達の声が、光を大きくした。
たぶん__信吾だ。
信吾のことに違いない。あいつは馬鹿でかい。熊みたいにでかい奴だ。
「引きずってくか?」
「__め、ろ」
暗闇の中から、ありったけの声で叫んだ。
お前らは知らないだけだ。
大野信吾は、その体躯を持て余すくらい、優しい心の持ち主なんだ。
だから、やめろ。
やめろやめろやめろやめろ‼︎‼︎
「おい、こいつ意識があるぞ?」
男の声がした。
湖から抜け出した俺はでも、霧が邪魔するように視界の焦点が合わない。
男が近すぎるのかもしれない。
俺の髪の毛を鷲掴みにして持ち上げる、ガスマスクの男。
「ジャージに間宮って書いてある」
「間宮旬だな。名簿にある」
「このガス食らって意識があるとは恐れ入ったぜ。俺、こいつに賭けるわ」
__賭ける?



