「そんな……」


あたしは自分の足元がぐらつくのを感じた。


少しの光さえ失ってしまったような真っ暗な気持ちだ。


「これで杏がスマホを持っていないか、充電ができない状態であることはわかった」


裕斗が冷静な口調でそう言う。


どうしてこんな時にそこまで冷静でいられるんだろう?


あたしは疑問を感じて裕斗を見た。


裕斗は汗をぬぐいながら、信号機を見つめている。


「しかし暑いな……」


裕斗はそう言い、少しだけほほ笑んだのだった。