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夏男との約束場所は学校の近くにあるファミレスだった。


昼時という事で家族や友人グループのお客さんが多く入っている。


あたしと夏男は一番奥の席に向かい合って座り、ひとまず昼ご飯を注文した。


「杏のやつ……一体どこにいったんだろうな」


夏男はそう呟いてため息を吐き出した。


夏男の目の下は黒くなっていて、一睡もしていない様子だった。


「わからない……」


あたしは夏男の様子を観察しながらそう返事をした。


「昨日、杏の行きそうな場所は一通り探してみたんだ。もう、検討のつく場所がない」


「あたしも、杏の両親と一緒に探したよ」


あたしの言葉に夏男は一瞬目を見開き、それから「そっか……ありがとう」と、言った。


「でも、杏はどこにもいなかった。あたしも、正直もうどこを探していいのかわからないよ」


「もしかして、どこかの友達の家に泊まってるとかかな?」


夏男が期待を込めるような口調でそう言った。


「友達の家までは探せてないもんね」


あたしはそう返事をする。


大事にしてもいいのかどうかわからないから、まだ他の友人たちにも杏が行方不明になっていることは伝えていない。