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「どこにもいねぇな……」


由花とさやの2人と別れて1時間半ほどが経過していた。


あたしと克矢は特に人気なビルを探して回ったが、杏の姿はどこにもなかった。


やっぱり、杏はどこかでとらわれているのかもしれない。


そんな思いがよぎった時、あたしのスマホが震えた。


画面を確認してみると、それは裕斗からのメールだった。


「由花たちからか?」


「ううん。裕斗から」


あたしはそう返事をして、克哉にも見えるような角度でメールを開いた。


《今夏男の家から出た所だ。合流できるか?》


「もう夏男の家を出たのか、早いな」


「そうだよね、まだ12時にもなってないのにね。もしかして何か有力な手掛かりを見つけて慌てて出てきたのかも」


あたしは《12時にTストアに集合》と、裕斗にメールを送った。


「少し早いけど、俺たちもTストアに向かおう」


「うん」


こうして、あたしと克矢はTストアへ向かって足を進めた。