「おはよう小春」


リムジンの後部座席から出て来た武人君がそう言ってドアを開けてくれる。


あたしはお姫様にでもなったような気分で、リムジンに乗り込んだ。


「今日はどこへ行く?」


揺れも少なく動き出すリムジンの車内で、武人君がそう聞いて来た。


「この前みたいに買い物しても楽しいけど、遊園地とかもいいな」


「ダメだよ。遊園地や水族館は」


「どうして?」


「事前に貸し切りにしてないと、ゆっくり楽しめないだろ?」


武人君の言葉に返す言葉もなかった。


遊園地や水族館は貸し切りにしてデートをするものだなんて、そんな概念はあたしにはなかった。