インフルエンザだと嘘をついてから一週間目の朝だった。


「今日で一週間か」


あたしはそう呟いた。


《明日、そっちに行くね》


昨日届いたメッセージ大きくため息を吐き出した。


せっかく努力をして小春ちゃんになり切っていたのに、今日帰らなければならないのだ。


あの小さくて、狭い家に。


寝心地の悪いベッドに。


がさつな友人と、ゴツゴツとした指の恋人に。


そう思うと、ベッドから起きだす事もできなかった。


いっそ本当にインフルエンザにかかって、もう一週間ここにいたいとすら考えた。


けれど、時間は刻一刻と迫って来る。