目の前の交差点に見覚えのある女性が立っていて、あたしは足を止めた。


雑貨屋の奥さんだ!


あの雑貨屋自体が幻のような存在だったから、奥さんも同じように消えてしまったと思っていた。


「奥さん!」


あたしは反対側の奥さんへ届くように大きな声をあげた。


奥さんはあたしに気が付き、視線がぶつかる。


その表情はとても冷たく見ているだけで凍えてしまいそうだった。


日記について聞こうと思っていたハズなのに、言葉が出ない。


行きかう車が邪魔をして、近づくこともできない。


ジッとこちらを見つめていた奥さんが、ゆっくりと口を開くのが見えた。