こんな時間に家へ行っても花音は出てきてくれないかもしれない。


それでも、あたしは行く必要があった。


遅くに外出するあたしを母親は引き止めようとしたが、それも振り払って外へ出た。


外は満点の星空でどこまでもよく見える。


そんな中、あたしは前だけを見て自転車をこいだ。


必死でこいでいたため、コートがいらないくらい熱くなる。


体の芯から温まってきた時、花音の家の前に到着していた。


自転車を投げ出すように置き、玄関のチャイムを鳴らす。


家の人が出てくるたった数十秒間が、永遠のように長く感じられた。


「はい」


そう言って出て来たのは花音の父親だった。