その時のあたしは熱が出ていて心が弱っていたし、勇の行動にビックリしていたし、とにかく混乱していた。


ただそれだけだった。


それが、翌日すっかり体調も戻って登校してきた時、勇のことが頭から離れなくなってしまっていたのだ。


『昨日は鞄ありがとう』


『あぁ。あれくらい』


その程度の会話をしただけだけど、それは今でも忘れられない会話だった。


それからあたしはずっと勇へ恋をしている。


そんな勇は席を立ち、真っ直ぐに梓のところへと向かう。