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個室に入ってホッとため息を吐き出した。


梓があたしのことを可愛いと言えるのは、自分の方が可愛いと理解しているからだ。


本当に可愛い子を見た時には焦りの方が大きくて、お世辞なんて言えなくなるだろう。


「ふんっ、偽善者が」


あたしはそう悪態づきトイレの水を流した。


「美春大丈夫?」


そんな声が個室の外から聞こえてきて、あたしはハッとした。


美春って、美春先輩のことだろうか?


3年生の階だってトイレはあるのに、なんでわざわざ2年生の階に?


そう思い、聞き耳を立てる。