けれど、山田君が一緒ならあたしはまた前を向ける。


あたしは山田君の手を強く握りしめ返した。


「行こうか、彩羽」


「うん」


あたしは手を繋いで歩き出す。


前を向いて……。


「ねぇ、ホテルにフェイスが落ちてたって知ってる?」


誰かの会話が聞こえて来た。


「知ってる知ってる! あの子もなかなかやるよねぇ」


クスクスと笑い声。


なんの話だろうと思って振り向いたけれど、誰が会話をしていたのかわからず、あたしはまた歩き出したのだった。






END