「そう言ってくれるのはナナだけだ」


握りしめられた手に力がこもる。


あたしの心臓がドクンッと大きくはねた。


何気なく歩いていたけれど、もう少し歩けばホテル街に出る。


「ナナ……。ナナさえよければ……その……」


言いにくそうに言葉を濁すカナタ先輩。


彼女をホテルに誘うことさえ、こんなにモジモジしているのだ。


カナタ先輩が遊び人なハズがない。


そう思ったあたしはニッコリとほほ笑んだ。


ここで関係を持っておけば、もう美春先輩も何も口出しできないはずだ。


「行きましょう?」


そう言い、手を握り返した。


「い、いいのか?」


「はい。あたし、初めてでうまくできないと思うけど……」


「そんなの気にする必要ないよ。初めてで俺を選んでくれて嬉しい」


あたしたちはそのままホテルへと歩き始めたのだった。