それから1時間ほど歌を歌ったあたしは、カナタ先輩に家の近くまで送ってきてもらっていた。


「ここまでで大丈夫です」


そう言って立ち止まると、カナタ先輩があたしの肩に手を回し、引き寄せた。


カナタ先輩との距離がゼロセンチになり、唇がぶつかる。


自分が外でこんな事をすることになるなんて、思ってもいなかった。


誰もいないとはいえ、さすがに恥ずかしい。


「ナナ真っ赤」


「だって……」


「可愛いよ」


可愛い顔の女の子が照れているんだから、それはそうだろう。


葉月であるあたしが照れていたって、可愛いなんて誰も言ってくれない。