上下ジャージ姿で自転車を漕ぐ。 一秒でも早く前に進みたいが、信号機が邪魔をした。 舌打ちしながら、青になるのを待つ。 真凛はいったい何を考えているんだ! 目的地に着くと道端に自転車を投げ捨て、 息を整える暇もなく一軒家のインターフォンを連続で鳴らす。 「晴人!」 弁護士の両親は事務所に泊まり込むことが多く、俺が訪ねると決まって不在だった。 「入って」 すぐに扉が開き、中から低い声が聞こえた。 明るい室内に入ると、真剣な顔をした晴人と目が合った。