檻の中の君、棺の中の貴女

その日の通夜にはいけなかった。


お母さんによると私は、昨日は部屋から一歩も出てこなかったらしい。

私がふらつきながら階段をおりると、時計はお昼の12時を過ぎていた。

正直、自分が眠っていたのかすら覚えてない。
眠たいからなのか、泣き疲れたからなのか、頭がとてもぼーっとした。

「今日、お葬式をするんですって」

台所にいるお母さんが、私に声をかける。

「……うん」

小さい声で頷きながら、私はリビングのソファに座った。

「制服にアイロンはかけたから、これでいってきなさいね」

「うん」

「お腹はすいてる?」

「………わかんない」

「…そっか」

心配そうに、私に近寄るお母さん。

顔を見ると、お母さんも泣きそうな顔をしていた。

「仲良しだったものね……つらい、ね」

そう言ってお母さんは私を抱きしめてくれた。

お母さんの体はあったかくて、優しくて、私はまた泣いてしまった。


昨日から、ずっと思ってる。

これは何かの間違いだよね?
これは、ただの夢だよねって


そう思いながらも、涙が止まらなくて
苦しくて



今日のお葬式に行くのが、とてもとても怖かった。