雨の音がする。

窓の方を見ると、どうやら土砂降りなようだった。

この場にお似合いの天気だな、なんて思いながら棺の中の彼女を見た。

彼女は安らかに眠っていた。
その姿はまるで人間のよう。

人の死とは、呆気ないものだ。

少し前まで笑っていた彼女が、こうしてここにいる。

言葉に表せない気持ちを噛み締めながら、
白い花を彼女に添えた。


その時だった。



「ーーー唯ちゃん!!!」

扉が開く音同時に、叫び声がした。

驚いた僕が振り返ると、その声の持ち主であろう女の子が僕の元へ走ってきた。

いや、違う。
この子の目的は僕じゃない。

この子の目的は、棺の中の彼女だ。

その子は泣きながら、棺桶にすがりついていた。

「ねぇ…起きてよ!眠ってるだけなんでしょう…?ねぇ、唯ちゃん!起きて……!!いつもみたいに…冗談だよって笑ってくれるでしょ……ねぇ……?」

それは返事の来ることのない問いかけだ。
でもその子はひたすら繰り返す。

泣きながら、信じないからねと叫んでいた。

周りの大人達からも、鼻をすするような同情の音がする。

そんな中僕は、その子を見つめていた。

きっと僕だけは、別の感情でその子を見つめていた。

現実を受け入れない、親友の死に本気で泣いているその子の姿に、僕は恋していたんだ。



そして決めたんだ。

もう二度と、失敗は繰り返さないとーー…。