「それってどー言う事っすか?」


ここに来て初めて口を開く俺に麻友先輩の視線が向く。

それと同時に一時間目の始まる予鈴が聞こえたものの、俺達の足は佇んだままだった。


「もう行かないって。そうあたしに言ってきた」

「なんで?」

「芹奈、あぁ見えて弱い。精神的に参ってる」

「……」

「年上限定?高学歴?ガード固い?そうさせたのは前の男達」

「……」

「芹奈って綺麗でしょ?それだけで男は寄ってくんの。ただ傍に置いときたいって感じで。同級生はみんなそうだった。芹奈、結構適当に扱われて来たんだよ…」

「……」

「だからそっからは大人な男に惹かれていった。だからそんな噂が流れてさ、だからと言って大人でも大した奴は居なくて――…」

「も、もう麻友ちゃんやめようよ?芹奈ちゃん可哀そうだよ。そんな事言ったって何もなんないよ」

「じゃ、どうすればいいの?萌になんか出来んの?」

「…出来ないけど」

「だったらもうここに居る晴馬と透哉君しか居ないでしょ!?」

「分かってるよ、そんな事!!でも、これ以上芹奈ちゃんの泣き顔見たくないよ!!」


麻友先輩の腕をグイグイ引っ張って会話を止めようとする萌先輩は相当に芹奈先輩の事が好きなんだろう。

そんな涙目になる萌先輩が声を荒げてると、「なぁ萌。俺と遊んどこーぜ」晴馬先輩の言葉に萌先輩の眉が寄った


「もう!こんな時に子供扱いしないでよ!!」

「だって萌ちん子供だろ?」

「違う」

「じゃあタバコ吸う?」


咥えていたタバコを笑いながら晴馬先輩は差し出した。


「もうさ晴馬君、先生に言うよ?」

「ほらでた!何かとお前はセンコーだな。で、麻友続きは?今回の主役は誰なわけ?」


やっぱり。

晴馬先輩の言葉で、俺が思ってた辻褄が全て重なり合ったような気がした。