「で?なんで萌まで来てんだよ。授業始まるから戻れって」

「なに?なんで晴馬君はいつもあたしを除け者にするの?」

「違う。除け者じゃねーよ。萌はお子様だから会話についてけねーよ」

「ついていけるしっ!だって芹奈ちゃんの事でしょ?だったらあたし居てもいいじゃん」

「お前はほんと芹奈の事好きだねー…俺と芹奈どっちがいいの?」

「芹奈ちゃんに決まってるでしょ!!」

「そんな直球で言うなよ。んじゃ、ちょっと萌は大人しくしてて」


何だよ、この会話。と思いながら俺は立ち止まった人気は居ない場所の壁に背をつけた。


「で、芹奈何してんの?俺には体調悪いって言ってたけど」


しゃがみ込んだ晴馬先輩はタバコを咥え火を点けた。

そんな晴馬先輩を俯くように眺め、俺は視線を落とす。


「ほんとに風邪だよ?芹奈ちゃん、あたしにも体調悪いって言ってたし」

「だーっ、萌は口挟むなって。だからお前来っと話が乱れんだよ」

「だってホントだし。ね、麻友ちゃん?」

「お前、可愛い顔して言っても無駄だぞ。麻友の顔見てっと分かんだろ」


確かに物凄く可愛らしく言った萌と言う人とは対照的に麻友先輩の顔は明らかに違う。

目の前で腕を組んで一息吐いた麻友先輩は顔を顰め、そして閉ざしていた口を微かに開いた。


「芹奈。学校やめるって」

「ちょっと麻友ちゃん!」


慌てて萌先輩が声を上げ麻友先輩の身体を揺すった。


「は?」


と言う晴馬先輩の声以上に驚いたのは俺の方だった。