「あぁ、好き」
今までのあやふやな気持ちが一気になくなった。
「そんな好きなんだ。でもあの人は学生とは付き合わない」
「……」
「それでも?」
「あぁ」
「分かった。透哉の事諦める。ただし、あたしを抱いてくれたら」
「お前…」
「今すぐ抱いてくれたら本当に諦める。もう透哉には近づかない」
「それは違うだろ」
「違くなんかないよ。じゃないと忘れられない」
「…だから、」
「お願い。最後に抱いてよ」
「それでお前は納得な訳?」
「納得する」
「分かった。約束守れよ」
凭れていた扉から背を離し、俺は微かに開いていた扉を開ける。
誰も居ない静まり返った中に入り、そして倉庫へと足を進ませる。
綺麗に整頓されてある奥にはマットが敷かれ、そこにマドカは腰を下ろし自分のシャツのボタンを外していった。
そこに覆いかぶさるように俺は自分のネクタイを緩め、マドカの首筋に顔を埋める。
だけど、だけど…
それ以上、俺の手は動かなかった。
約束を守れと言った俺がマドカの約束を受け入れる事が出来なかった。
頭にチラつく芹奈先輩の顔が俺から離れようとはしない。
だから思った。
俺は相当、芹奈先輩の事が好きなんだと。
つくづく思い知らされていた。



