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気が付けば俺の手は次へ次へと捲り、その絵に見入ってしまう。

と、そこから一枚の画用紙がパラりと床に落ちた。


それを拾い上げた瞬間、塗りつぶされた人物に息を飲み込む。

塗りつぶしても完全には消えていないその人物は俺にでも分かってしまった。



あの日。涙を流して去って行った時の男。

せっかく描いた絵は無残にも汚れ、スケッチブックから千切るくらい消したかったんだろうか。


見なかった事には出来ないが、俺はそれをもう一度スケッチブックの真ん中に挟んで、元の位置に戻す。

そしてそのまま何故か俺は芹奈先輩の斜め前に腰を下ろした。


正直自分にビックリする。

持ってきたプリントがスラスラと埋め尽くされてく。

だけどそれとは関係なくまだ眠っている芹奈先輩が自棄に気になってしまった。


いつまで寝てんだ。と思う一方、何故かこの場所が居心地よく感じてしまった。


どれくらい時間が経っているかなんて分からない。

だけど1時間近くは確実に経過している事。


ズボンのポケットからスマホを取り出し時間を見る。


…16時56分。

それと同時に目に入ったのがイチカからのLINEだった。


″ねぇ、今日は無理なの?″


だから無理だっつってんだろ。なんて思いながら″ごめん″とだけ返す。

それともう一件のLINEに俺の手が不意に止まった。