「なぁ、そう言えば絵描いた?コイツの」
「うん、描いたよ。あの日に描いた」
「マジか。わー、見てーな。今度見せて」
「うん。…今からでもいいよ」
「え?」
「あ、いや。今度っていつか分かんないし」
「あー、そう言う事?んじゃ見せてよ」
「じゃ、行こっか。じゃーね、バイバイ」
立ち上がった先輩に、クゥーンと寂しそうに鳴く。
「お前、そう言うところまじオスだな」
「え、なにそれ」
クスクス笑う先輩に俺も同じく鼻でフッと笑った。
お前も芹奈先輩が好きなのかよ。
なんて思いながら一息吐く。
芹奈先輩のヒールの音が密かに響くその隣で、俺は深呼吸をした。
この人と居るとやっぱり乱れる。
自分が自分じゃないように思う。
「先輩さ、夏休み何してた?」
「うーん…バイトしかしてないよ」
「え?バイトしてんの?なんの?」
「カラオケ店。でももうすぐ辞めるんだ」
「なんで?」
「自分の中で夏休みまでって決めてたから」
「へー…つか以外。芹奈先輩もバイトとかすんだ」
「えー、なにそれ。って言っても友達の代わりでやってたの。透哉くんは何してたの?」
「俺はダチと遊んだり、あと海の家手伝ったり」
「えーホントに?海の家って憧れる。楽しい?」
「うーん…暑い」
「そのまんまじゃん」
そう言って芹奈先輩はクスクス笑みを浮かべた。



