入ってすぐ、待ってましたと言わんばかりの担任が頬を緩めた。


「ちゃんと来たな」

「さっさと始めようぜ」

「3教科。国語と数学と英語な。時間は一教科50分あるから」

「は?そんな時間いらねーから。3教科50分にして」

「さすが無理だろ」

「俺、時間ねーんだよ。こんなので時間使いたくねーから」


無駄な時間など使いたくもない。

手を差し出して、3教科のプリントを受け取る。


「焦ったら答え間違えるぞ。時間を掛けてゆっくりと――…」

「終わったら言うから」


面倒くさそうにそう呟き、ペンを走らせる。

この前、あんなしたのに今度はテストかよ。なんて思いながら解答していく。


どれくらい経ったのかも分からず俺は最後のプリントを全て解いた。


「はい。終わったから帰る」


今にもうたた寝しそうな担任に向かってそう言い、目の前にプリントを置く。


「え、お前ちゃんと見直したのか?」


担任が掛け時計に視線を送ると同時に俺も視線を向けた。

丁度あれから1時間。


「したした」


特にしてもないがそう言って俺は部屋を出た。

もう殆どの生徒が帰ったのか静けさが増す。


昇降口で靴に履き替え、階段を降りようとしたその時、「…透哉」沈んだその声に俺は足を止めた。

振り返った先に居るのはマドカで。


「なに?」


俺は素っ気なく返した。