「おい、成瀬」


HR終了後、帰ろうとしていた俺の足が担任の声によって止められる。

振り向くと、「お前、テスト」その言葉に深いため息が漏れた。


忘れてた。

もうそんな事すら頭になかった。


「早く来いよ。第一学習室に」

「だるっ、」


思わず出た声に余計疲れが増す。

気怠く階段を下りていると、「おぉ、透哉。いいところに」なんて修二が背後から駆け寄って来た。


「どした?」

「悪いけど今日カットモデルお願い」

「えー…そんな切りたくねぇんだけど」

「そー言ったら大丈夫だから。兄貴がそろそろ来てほしいって」

「つかお前がやったらいいんじゃね?」

「俺は直々、兄貴から無理宣言されてんだよ。むしろ透哉がいいって指名されてんだから」

「ヒロさんの頼みなら仕方ねぇよな…けど俺今からテスト」

「あー…じゃあ言っとくわ。その後、寄って」

「おぉ」


話しながら足進め学習室の前に来て扉を開けようとした瞬間、「なぁ、お前どうなってんの?先輩と」なんてクスクス笑みを漏らせながら俺を身構える。

「別にどーもねぇよ」

「イチカが俺にしつこく聞いてきたけど」

「で、なんて言った?」

「興味ねーから知らねーって」

「そのほうがありがてぇわ。別に何もねーし。じゃーな、」

「帰り頼むぞ」


修二の声に軽く手を上げ扉を開ける。