「あ、あのね。お願いがあってきたんだ」

「無理」


理実の話は聞くまでもない。

聞いた所でいい話なんて全くないのが現状で。


「まだ何も言ってないじゃん」

「ロクな話じゃねーだろ」

「聞いてもないのに言わないでよ」

「……」

「あのね、透哉に会いたいって人が居るの。で、オサムも一緒にね」

「え、俺も!?」

「そう2人セットでね。修二くんは彼女いるから無理かなーって。で、オサムは絶対OKくれると思ったからさ、透哉の所に来たの」

「おー、さすが理実だな。分かってるねー。でも俺もさっき同じような事言ったら、こいつ断ったから俺だけでいい?」

「えー、それはダメだよ。2人セットだもん。じゃなきゃ、あたしが困る。ねぇ、透哉お願い。会うだけでいいの。一生のお願い」


ほらな。やっぱロクな話じゃねーだろ。

背を向けてる俺の背中を理実はグラングランと大きく揺する。


「そのお前の一生のお願いって、何回あんの?」

「さぁ、分かんない。分かんないけど、あたしの人生もかかってんの!」

「はぁ?なんの?」

「あのね。透哉とオサムに会わせてくれてら、あたしも大好きな先輩と会わせてあげるって言われて。だからあたしの人生かかってんの」

「はぁ!?お前の人生なんて知らねーよ。そんな事で俺を使うなよ」

「はっ?なに?なんで透哉はそんな冷たいの?だから振られまくんだよ!!」

「ギャハハ!!理実、面白い事、言うねぇ!俺はお前の幸せを願って、会ってあげるよ」

「さっすがオサム!!」

「俺、透哉と違って優しいからな」

「ほんとそう!」


どうでもいい会話が流れ込んでくる。

愚痴を言えば笑い声。会いたいから会ってあげてと言われて会った女達はロクでもなかった。

経験上、いい思い出なんて全くない。