「勉強なんかしねーのに。むしろお前がそんな事してっから雨降んだろーが」

「はぁ?」

「どうするよ、この女達」

「知らねーよ」

「しゃーねーから修二でも紹介しとくわ」

「アイツ女居んだろーが」

「こー言う女って誰か言わねーと引き下がんなくね?あ、そだ。晴馬先輩でもいっとこかな」

「晴馬先輩?」


何故かその名前で引っかかってしまった。

晴馬先輩イコール芹奈先輩に、なる。


あの学校で唯一、芹奈先輩が男と話すのは晴馬先輩ただ一人だからだ。


「女ウケいいのって晴馬先輩くらいしかいねーじゃん。男から見てもカッコよくね?」

「まーな、」

「結構、晴馬先輩って謎多き男だよな。告って来た女に断り入れる時、芹奈先輩使うんだって」

「はっ?」


思わず声が出てしまった。

使うって、何が?


「まー、この辺じゃあの人、有名じゃん。でも芹奈先輩使うのも地元から離れてる奴らにしか使わないらしいけど。この辺じゃバレるしって」

「なんだ、それ」

「それに芹奈先輩の紳士な彼氏とやらも晴馬先輩繋がりらしいしよ」

「マジ?」

「まぁ、繋がりっつっても大学のツレのまたまたツレの、またまたツレの…そのツレみたいな」

「それ繋がりじゃねーだろ。遠すぎんだろ」


正直、ホッとした。

あの紳士な男が晴馬先輩とやらの紹介だったら、どんな男紹介してんだよって突っ込みたくなるところだった。

思い出したくなくても脳裏を過る。

過去を消し去るようになるくらいまで黒く塗りつぶした画用紙。


噂通りとは全くかけ離れた人の涙が何故か頭に浮かぶ。

そんな事を思い出すのは、今日初めてあの人と話したからだろうか…