「で、何?」
早く要件を終わらせてとっとと帰りたい。
だからと言って別に早く帰ったところで何もねぇけど、こいつとは出来るだけ一緒に居たくはない。
「どこか入る?雨、降ってるし」
困ったように小百合は空を見上げた。
「いや、要件聞くだけだから。で、なに?」
「あのね、あたしもう一度、透哉とやり直したいの」
「は?」
すぐさま声が出てしまった。
目の前の小百合は俺の顔をジッとみて視線を逸らそうとはしない。
「考えたの。やっぱり透哉じゃなきゃダメって、気づいた」
「つか、お前自分の言ってる事分かってんの?」
「分かってる」
「お前に振られたの、俺だけど。好きな奴が出来たから別れてって言われたの、俺だけど」
「……」
「なのにお前、今更何言ってんの?」
しかも散々な言われようをしたのは俺だった。
顔は良いけど、付き合ったら違ったとか。
必要な時だけ俺を使って、振り回されて来たのは俺の方。
なのにやり直したいとか、マジ意味不明。
「今更なのは分かってるよ。でも、透哉の事がまだ好き。分かったの、あたし。あの後、他の人と付き合って気づいたの」
「……」
「やっぱり透哉じゃなきゃダメだって。だから――…」
「悪いけど、小百合とは付き合えない」
「…さっきの人と付き合ってるの?」
一瞬、誰の事を言っているのか分からなかった。
あまりにも小百合のインパクトが強すぎたせいで、さっきまで居た芹奈先輩の存在すら忘れかけていた。
「つーか、お前に関係ねーだろ」
マジで関係ねーから。
出来れば、付き合ってる。と言いたい。
だけどそんな嘘すらつけず、だからと言って友達と言う言葉も違う。
だけら結局は知られたくない言葉を放ってしまった。



