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「あー…なるほど」


思わず心の声が漏れてしまった俺に、「え?」芹奈先輩はちゃっかり反応をみせる。


「あー…いや、別に」

「え、なにそれ」


原因は隣でクスクス笑っている芹奈先輩だろうと。

俺を。じゃなくて、芹奈先輩を見てるんだろうと。

いや、むしろ芹奈先輩と何で居るんだ、と言う俺を見てるんだろうと。


「マジ何でもねーし」

「ふーん…あ、そだ。今度なんかお礼するね」

「お礼?」

「そう。傘の」

「傘のって、これ俺の傘じゃねーし」

「でも助かった。結局止まなかったしね」

「全然通り雨じゃねーしな」


空を見上げてため息を吐き捨てた。

と同時に隣に居ない気配を感じ、思わず足をとめ振り返ると芹奈先輩は遠くの方をボンヤリと見つめていた。


「どした?途中で止まったら濡れんだろ」


芹奈先輩の頭上に傘を差すと、先輩は寂しそうに視線を落としとかと思うと、「ごめん」そう言って寂しそうな笑みを浮かべた。

歩くペースがさっきよりも遥かに落ちた。

それは芹奈先輩の歩幅が自棄に小さくて、それに合わせようとする俺の歩幅が自棄に不自然だった。


気にならないと言えば気にならない。

だけどさっきよりも激変したその表情に、気にならないわけがない。


だから咄嗟にさっき芹奈先輩が見つめてた方向に視線を送った。