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「お待たせ」


芹奈先輩の隣に着た瞬間、バッと傘を広げる。

相変わらずまだ止みそうにない雨。それどころか、さっきよりもまた雨がひどくなったかの様にも思う。


「えっ、どうしたの傘。誰の?」


不思議そうに見上げる先輩は、まるで誰かのをパクって来たの?とでも言いたそうな視線だった。


「ツレの」

「友達?大丈夫?勝手に持ってきて」

「あぁ。もう数週間前から借りてっから」

「えっ、それって返してないって事でしょ?」


声に出して笑い始める芹奈先輩に、「アイツも忘れてっから大丈夫」そう言って俺も口角を上げた。


「良かったら入れば?」


頭上に広げた傘から芹奈先輩へと視線を向ける。

一瞬、戸惑った芹奈先輩の瞳。

だが、「ありがとう」素直に呟いた芹奈先輩は俺と肩を並べ足を進めた。


「宿題のプリントはいつ提出なの?」


そう言いながら芹奈先輩は胸元で鞄を両手で抱きしめ、俺を軽く見上げた。


「明日」

「えっ、明日?間に合うの?あと半分でしょ?」

「明日居残ってするわ。夏休み来たくねーし」

「え、家でやんないの?」

「家ねぇ…やる気でねーしな」

「うーん、そんなタイプだよね」

「タイプ?」

「あー、なんか勉強やらなさそうだもんね。見た目」

「おーい、見た目で決めんなよ。ま、あながち間違ってねーけど」

「まー頑張ってよ。そんな事しか言えないけど」

「どーも」


駅に近づくにつれて、学生たちが増え始める。

同じ制服を着た奴、他校の制服を着た奴。

ファーストフードにカフェ。駅周辺は学生達のたまり場。

学生たちで賑わうカラオケ店へと足を進める人達。


あぁ、そう言えばイチカが誘ってきたっけ。

だからと言って今更、行こうとも行きたいとも思わないけど。


人通りが増すにつれて何故か俺は違和感を感じた。

こっちに視線を向けて来る人。


女と言わず男もまでもの視線。

同校も他校の奴らが向けて来る視線が自棄に気になって仕方がなかった。