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その嬉しそうに見つめる芹奈先輩の横顔がこの前の涙目と重なる。

って、何でそんな事気にしてんだよ、俺。


聞こえないようにと小さくため息を吐きだした。


「ねぇ、写メ撮る?」


振り返った芹奈先輩に思わず苦笑いになる。


「撮らねーし」

「だよね」

「俺が撮ってたらおかしいだろ」


頬を緩ませてた先輩は少しずつ視線を上げ、空を見上げる。

つられて視線を上げた先には、晴れた空の虹にまだ止みそうにない小雨。


小雨とは言え、駅まで行く距離を考えたら濡れるだろう。


「…止まないね」

「どーする?走る?って、走れる距離じゃねーよな、だるいし」

「先、帰っていいよ」

「え?」


視線を芹奈先輩に向けると、「完全に止むまで待ってる」そう言って口角を上げた。


「完全にって、いつか分かんねーよ」

「そーだけど…」

「…あ、ちょい待ってて」

「えっ、」


思い出した。

何でもっと早く思い出さなかったんだろうと。


以前、修二に借りた傘が体育館の入り口の傘置き場にあるのを思い出した。

って言っても遅刻して裏口から教室に入る途中に、そこに差し込んだ事。

むしろ修二に返さなきゃいけねーのに、既に数週間は経っている。


それにもう修二すら忘れているだろう。

少し荒れた息を整えながら、数本あるうちの傘立ての中から一本引き抜く。


使ってんのか分かんねぇホコリまみれの中から簡単に取り出せたのも、修二のおかげだ。

透明のビニール傘。持つ所には修正ペンで、シュージと書かれてある。


それを手にして俺は急いで昇降口へと足を進めた。