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「先輩って、何で来てんの?」


そんな事、聞いてどうする。

むしろ、そんな事他の奴が言ってっから知ってんのに。


「えー、電車だよ。後輩君は?」


後輩君って。

ま、そりゃそうだよな。

先輩からしたら俺は、ただの後輩。

だからと言って、別に名前を教えて覚えてもらおうなんて事も思ってない。


「俺も電車」

「あ、一緒だねー…」


図書室を出て、俺は芹奈先輩の一歩後ろを歩く。

何でこの人、こんなに馬鹿なんだろう。

俺のイメージガタ落ちじゃねーかよ。


もっと冷たくてクールな方がよっぽどマシ。

他の奴らが″好き″だと言う空間に俺も入ってたわけで、でもそれは恋愛対象じゃない、ただの憧れのような人だった。

もっと言えば、他の奴が騒いでるほど俺はこの人の事を意識なんて全くしてなかった。

むしろ、憧れと言うよりも興味がないだけだった。


″硬派な年上って、俺ら全然当てはまってねーじゃん″


オサムが言った言葉が全くその通りで。だから別にどうでも良かった。

なのに想像を描いてた人とは全くの別人で…


だから余計に気になる。



「…なにやってんの?」


昇降口で先に履き替えてた先輩は玄関の所から両手を上げてスマホを空に向けていた。


「ねぇ、見て。物凄く綺麗だよ」

「あー…虹か」


さっきまでの物凄い雨は嘘のように小降りになり目の前には虹が広がる。

川の端と端を囲むように大きく円を描いていた。