「透哉くん。じゃなくて透哉」

「え、」

「ほら言ってみ?」

「もー、なに?」

「早く」

「…とう、や」

「もう一回」

「透哉、好き」

「俺も芹奈が好き」


再び合わせる唇から吐息が漏れる。

何度も重ね合わし、キスにただ溺れている瞬間、不意に鳴った着信音でピタリと唇が離れた。


「ごめん、あたしだ」


俺の身体から手を振りほどき、下に置いてあった鞄の中から芹奈はスマホを取り出す。


「誰?」


ジッと見つめる芹奈に俺は声を掛けると、何故か苦笑いをする。


「萌だ」

「萌ちゃん?出れば?」


コクリと頷いた芹奈はスマホを耳に当てた。


「萌?どうしたの?」

「芹奈ちゃーん!今、何してるの?」

「え、いま?」


漏れて来る萌ちゃんの声に何故か芹奈は焦りだす。

その表情が面白く感じた俺は芹奈に近づいて、首筋に唇を滑らせた。


「え、ちょっ、」


思わず声を出し身を引いた芹奈にクスクス笑う。


「どうしたの?芹奈ちゃん…」

「え、ううん。で、萌どうしたの?」

「あのね。晴馬君がね、萌の家から帰んないの。だからね芹奈ちゃん、来て」

「え、ごめん萌。ちょっと無理」

「なんで?芹奈ちゃん何処にいるの?」


「おーい、萌!!お前、芹奈にいちいち電話すんなよ」

「じゃ、麻友ちゃんにする」

「はぁ?麻友がお前の話聞く訳ねーだろ!」

「だって、晴馬君帰んないじゃんか!!」

「芹奈に掛けても芹奈はお取込み中だってよ、」

「え、お取込み中って何?」

「はぁ?んなもんもお前分かんねーのかよ。透哉とセックスに決まってんだろ」

「え。そ、そうなの芹奈ちゃん…」


萌ちゃんも天然なんだろうか。

直球に聞いて来る萌ちゃんに芹奈が困ったように笑う。