「って言うか、絵凄いっすね」
もうプリントの話はどうせもいい。
話を逸らして俺は芹奈先輩の手元にある絵に今度は視線を移した。
「あーこれ?でも失敗作」
「失敗作?どこが?」
間髪を容れずにすぐさま声を出してしまった。
失敗って、何処が失敗なのか分かんねぇし。
むしろこんなデッサンする人、初めて見たわ。
画家かよ。
「鉛筆の色合いがね…」
「俺には分かんねーけど。それってこっから見た風景だろ?」
「うん、そうだよ。この場所が一番景色いいよね」
この場所から見えるものは正門。
そこから先は長く続く川が見え、その向こうにはビルが建ち並ぶ。
今まで意識して考えなかったが、言われてみればそうなのかも知れない。
「絵、好きなの?」
「うん、好き。何か忘れたい事とか一人になりたい時とかに没頭しちゃう」
エヘヘと笑った芹奈先輩だけど、その表情が悲しそうに見えたのは気の所為だろうか。
「邪魔してごめん」
「え、全然大丈夫だよ?もう上手くできないから辞めようと思ってたし。ま、寝てたんだけどね」
苦笑いで口を開いた芹奈先輩はスケッチブックをスッと閉じた。



