その芹奈先輩と一緒に行くと決めた初日。
隣に居る芹奈先輩はやはり表情を暗くしていた。
久し振りに着る制服。それは芹奈先輩も同じで。
「先輩…」
俯く先輩を俺はギュッと抱きしめる。
その咄嗟の行動で、先輩はビックリしたのか腕に力を入れた。
「えっ、ちょっ、みんな見てる」
「見てねーし」
「見てるよ。ここ正門」
「見せつけとこーぜ」
「やだよ」
「はぁ?やだよ、とか言うなよ」
先輩の身体を離すと、先輩は俺を見上げ薄っすらと笑みを浮かべる。
「だって恥ずかしいじゃんか」
「全然」
「もぅ」
「あー、やっと笑ったから行くぞ」
口角を上げて足を進める俺に、「え?」と芹奈先輩の声が聞こえる。
「だって笑わねぇから。行きたくねぇなら無理して行かなくてもいい。一緒に行かねぇと俺も辞めるとか言ったから来たって感じ?もしそうだとしたら無理して来なくていい」
「……」
「これ以上、芹奈先輩の泣き顔みたくねぇし」
「……」
「むしろ俺は学校行かず、ひたすら先輩と居たい」
頬を緩める俺に先輩も困ったように笑う。
「もう何言ってんの?」
「何って一緒に居たいって」
「あたしも居たいよ。ずっと透哉君の傍に居たい」
「おっと、先輩。こんな所で大胆な告白すんなよ。それこそみんな見てるし」
「…っ、」
恥ずかしくなったのか先輩が俯く。
その姿に俺は声を出して笑い、頭をクシャリと撫でた。



