「同じクラスの奴がさ、前にも停学しててプリント大量に貰ってからね」
「あー…なるほど」
多分、きっとこの人と同じクラスと言えば、晴馬先輩だろう。
芹奈先輩と話してる所を、たまに見るからだ。
「大変だねー…」
「ま、自業自得っす」
「あとどんくらいなの?」
「あと半分。マジやる気失せる」
「だろーね…どれどれ?」
「何?やってくれんの?」
「まさか」
クスリと笑って一度身を離してた先輩はもう一度前のめりになってプリントを覗き込む。
つか全然ガード固くねぇし、むしろ凄ぇ緩すぎだろ。
誰が言い放った噂か知んねーけど、この人、緩すぎ。
「あー…数学って難しいよね。えーっと、ここの値がXとyだから――…」
「……」
まさか。と言いながらも先輩は俺のプリントにペンを走らせた。
それよりか俺は芹奈先輩から香るそのほんのり甘い匂いで集中すら妨げる。
「ねぇ、これ正解してる?」
ハッと意識が戻ると芹奈先輩はニコっと笑って俺を見つめた。
その美人過ぎる顔がまともに見れない所為で、俺はスッと視線をプリントに戻した。
「あー…うん。してる」
「良かったーってか、あたしがしてどーすんだよね。それ、消しててね」
消しててね。と言われたけど、何故か消す事が出来なかった。
芹奈先輩が書いた綺麗な数字がプリントを埋め尽くす。
それを消すのは何故か勿体ないと思ってしまった。



