「悪いな、」
とりあえず誤って新しいタバコに火を点ける。
思い出せば出すほど、また怒りが芽生えてきそうだった。
アイツを許したわけでもなんもねぇ。
多分、もう一度見れば殴ってるだろう。
そんな事を思ってると不意に鳴るスマホに俺の手がポケットに伸びる。
画面を見ると珍しく姉貴からの電話で、なぜか俺は切ってしまった。
だけど再び鳴り続ける電話に軽く舌打ちをし、俺は仕方なく耳に当てる。
「アンタ、切るなんていい度胸してんね」
「なに?用もねーなら掛けてくんなよ」
「用あるからかけたんでしょ?」
「だから何だよ、」
「あんたに客が来てる」
「はぁ?」
「部屋に通したから」
「あ?余計な事すんなよ」
「この前も来てくれたから帰す訳にもいかないでしょう。もう遅いんだし」
「誰?」
「知らない。初めて見る顔。だけどアンタには勿体ないくらいの超美人な女の子」
「…え?」
「待たしてるから今すぐ帰ってきて!」
キッパリと告げられてプツリと切れると同時に、俺はすぐさま立ち上がった。
「悪い。俺、帰るわ」
「はい?」
2人で話し込んでたオサムが俺を見上げる。
「じゃーな」
俺は何故か急いでいた。
名前を聞かなくてもなんとなく分かる。
俺の予想が外れてなければ、きっと芹奈先輩だろうと。
そんな証拠ねーにしても、俺は原付で何故か急いだ。



