「傘、持ってきてないのに」
「俺も」
「あ、一緒だ。降るって言ってなかったもんね」
「梅雨明けたのに最近よく降るよな。ま、通り雨だろーけど」
「あはは」
何処が笑いのツボなんだ。と思うほど芹奈先輩は急に声を出して笑い始める。
「え?」
声と同時に俺は振り返ると、芹奈先輩はクスクス笑って、頬を緩めまくっていた。
「あ、いやね。あたしと同じ事思ってたんだと思ってね。凄いね、シンクロしてんじゃん」
「マジか、すげー…」
未だに笑みを漏らす先輩に俺も同じく頬を緩めた。
芹奈先輩のイメージってこんなだったか?
もっと俺的には噂通りクールで冷たい人だと思ってた。
「ねぇ、何やってたの?」
長い髪を耳に掛けながら身を乗り出す様に俺のプリントを覗き込む。
「あー…宿題」
「えっ、宿題?量、多くない?」
「あー…宿題っつーか…」
伸びてきた芹奈先輩の手。
綺麗にピンク色のデコレーションされた爪に視線が止まり、と思うと先輩がそっと摘まんだプリントに今度は視線が向いた。
「あ、2年なんだ」
「そう」
「じゃあ後輩君だ。てか字、超綺麗じゃん」
「そーでもねーけど」
「うん、綺麗だよーってか、もしかして停学してた?」
苦笑いに口を開く芹奈先輩に、「何で分かったんすか?」つられて俺も苦笑いで返した。



