「えーと。私は…あ、二組の、二十一番だ」
私はクラス割表をみて呟く。隣では、やったぁ!れんとくんと同じクラスだ~と言う声が聞こえる。れんとくん、か。本性を、みんな知らないんだろうな。と思いながら、私はクラスへ向かう。
階段を通り過ぎて、一階の角。一年二組という看板を発見した。看板の下には、顔の整った、俗にいうイケメンが立っていた。まぁ、私はイケメンなんて思わなかったけれども。と、思っていると、そのイケメン(?)が私に気づいたらしく、声をかけてきた。
「やあ…」
整った顔立ち。高身長で、勉強も運動もできる。だから、凄くモテる。こいつの名前は…
「なんで、れんとがここにいんの」
赤坂蓮翔。同じ中学出身のモテ男でチャラ男。しかも、不幸なことに、幼なじみ。パパ同士が仲良くて、お風呂もプールも一緒に入った仲。最悪な思い出だ。
「え、だって、ここさ…賢い学校じゃん?そのくらい、余裕で合格できたし。私立でも、父さんはいいって言ってくれたし?」
とれんとは言う。れんとパパ、やめて。と私は言いたいのをこらえる。れんとのパパは、社長さん。凄くお金持ち。まぁ、うちと同じくらいかな。
「そういうことじゃなくて!私と同じ学校に、なんでいるのって聞いてんの!」
れんとは、看板の下にあるイスに座る。そして、無駄に長い足を組む。こーやってしとけば、顔はいいのに、と私は思う。そして、れんとは言った。
「菜津がここの学校だからじゃん。わかんない?」
私は、顔をしかめた。なんだこいつ、と思った。そして、
「なんで、私を追いかけてきたわけ?あんたなら、まだ上の学校目指せるじゃん」
と言った。悔しいけど、私よりれんとの方が頭がいい。授業中寝てるのに、テストは毎回ほぼ満点。いやになる。と、思っていた、次の瞬間。
「だから、菜津が好きだからに決まってんじゃん」
と言ってきた。私は思わずフリーズした。はぁ?また?思わず言った。
「…前から言ってるけど、なにかの罰ゲームかかんかなんでしょ。もうやめてよ、うざい」
私はれんとに言い放った。そして、私は教室に入ろうとした。すると、
「まって」
れんとが長い腕で私を捕まえた。私はバランスを崩して、れんとの上に座って、後ろから抱かれるような体制になってしまった。
「ちょ…っ。離してよ!」
私はじたばたと動く。でも、案外力が強くて抜けられない。
「俺は、本気だよ。菜津が分かってくれるまで、ずっと言うから」
れんとは、動けば動くほど、ぎゅっと抱きしめてくる…ような気がしてる。でも、こーゆーシチュエーションは相手がれんとでも、ちょっとときめく。
れんとは、私の両手を捕まえる。そして、耳の近くに顔をよせる。私は、ドキドキキュンキュンして、顔が赤くなるのが分かる。
あー、だめだめ!きっと、れんとはチャラいから、誰にでもやってるんだよ。違う違う!好きじゃないー!私はさっきの考えを打ち消す。…あー、もう。めんどくさい。うん、ときめいてない。私は、れんとの足の甲を思いっきり踏んだ。れんとの口から、
「…ってーな」
と声がもれる。抱きしめられてた腕の力がゆるくなる。そのすきに、教室へ走ってはいった。途中、鏡の前で立ち止まった。そこには、顔が赤くて息を切らした、私がいた。
なんで、れんとなんかにドキドキしてるのか、理解出来なかった。