ノリのきいたピチッとした制服に腕を通す。私は、今日から高校生。少し勉強して、名門の私立高校に入った。やるじゃん、私。
「さてと」
私は鏡の前に立つ。少しみんなよりも身長が高い私が鏡に写る。切りそろえられた、ボブの黒い髪。ぱっつんの前髪。黒縁メガネに、長いと思っている足。それに、お嬢様の様なブレザーを着ている。中学の時とはまた違う制服だった。
「私ったら、ブレザーも似合うじゃん」
思わず本音が漏れる。中学の時は、白と青のセーラー服だった。それが今では、ネイビーのブレザーに、チェックのリボン。チェック柄のスカートは膝上でゆっくり揺れている。
今日から高校生だし、スマホも持っていこうと、私は思った。マンガだと、みんな持っていってるし、明良も持っていってたし。私は高校祝いにお父さんにもらった、ブランド物のスクールバックの横ポケットにスマホを入れる。すると、バックにつけていた、ハートのストラップがちろりと揺れる。
そして、お気に入りのチェック柄のマフラーを巻いて、もう一度鏡の前に立つ。
「よしっ」
私はバックを持って、部屋を出た。どんな出会いがあるか、すごく楽しみだった。
ハートのストラップが、またちろりと揺れた。
私は、階段をおりて、お父さんのいるリビングへ向かった。
そして、お父さんに制服を見せた。お父さんは、一言、
「やはり、その学校にして正解だな」
と言った。似合ってるってことなのかな。
お父さんは分かりずらい。私は、
「でしょー。ありがとう」
と返した。これでよかったのだろうか…。
ふと時計を見ると、1時半を指していた。今日は入学式なので、学校には2時につかなくてはならない。
「え!やばっ。お父さん、行ってきます!」
私はそう言って、リビングを飛び出した。お父さんが後ろでなにか言っていたが、30分しかないので、振りむかなかった。
玄関でローファーをはいていると、後から
「お待ちください、菜津さま」
と声をかけられた。絶対浦部じゃん。と思った。
「ごめん、今急いでるんだけど!」
と私はローファーをはきながら返事をする。
電車に乗り遅れたら、次は10分後。余裕を持って行かないといけないから、次の電車まで待ってられない。と思っていると、
「車を前に回して参りますので、少々お待ちくださいませ」
と後から聞こえた。私は思わず、
「え?」
と言いながら振り返る。すると、浦部が
「お父様が菜津さまをお送りするように、とおっしゃいましたので」
と真顔で呟く。あ、そっか、夢の電車通学は消えたのか…。私はお父さんには、そういう面では文句が言えない。お父さんは過保護だから、ともう半分は諦めている。
「うん…じゃあ、ありがとう」
私は送ってもらう事にした。これから三年間ずっと、こうなるだろうなーと思いながら浦部が回してくれる車を待つ。
「さぁ、お乗り下さい」
浦部は信じられないほど早く車を前につけた。そして、ドアを開けてくれた。
私の記念すべき一日目の高校生ライフが始まる。私はドキドキしながら、車に乗った。