悠君は泣き虫だったよね。



生まれも育ちもニューヨークってだけで、生意気だなんていじめられることも多かった。



2月、学校にやってくる節分の鬼を怖がって、いつも私の後ろに隠れてた。



豆を投げて退治するのは私の係で、悠君は鬼が退散してもまだ泣いてる。



「大丈夫、もうやっつけたよ!」



フンフンと、戦いのあとで私は鼻息荒め。



悠君のキャラメル色のふわふわな髪
よしよししてあげなくちゃ。



そしたら、涙に濡れた目でじっと私を見つめて
悠君は言ったの。



「さらちゃんがいなくなったら、ぼくどうしたらいいの?」



だから私は胸を張って言ったのだ。



「さらはずっとここにいるよ!」
って。



「じゃあけっこんしてくれるってこと?」



「まぁ、それもあり」



「ぼくのことずっとまもってくれる?」



「まかせといてっ!」




当時7歳だったけど、私と悠君は結婚を誓いあった仲。
子供の口約束だもん。
だから悠君はそんなこと覚えてないはず。


ずっとそう思っていた。