アイリスの願い




夢中になって歌っていたら当たりが暗くなってきたことに気がついた。


ケータイのを見るともう18時半になろうとしていた。


そろそろだな、と私は帰る準備をし始めた。


準備が終わった頃。一つの影が私の上に落ちてきた。


私は顔を上げてぱっと笑った。



「お父さん!おかえりなさい!」


「ただいま、ナツミ」



優しく笑うお父さん。私はその笑顔が大好きだ。


金曜日の18時半。路上を終えた私はいつもお父さんと一緒に家まで帰る。


お父さんから貰ったギターを背負いながら。お父さんと手を繋ぎながら。


この歳にもなってお父さんと手を繋ぐなんて変かも知れないけど私は周りにどう思われようが良いんだ。


私はお父さんのこの大きな手が好き。


するとお父さんがふと視線を上げた。私もつられて視線を上げる。


すると目線の先には私が座っていたベンチの後ろにある大きな木があった。