不器用な殉愛


 理由がどうであれ、裏切ったという点には間違いがない。勝者と共に、そこに戻るディアヌは、周囲の目にはどう映るのか。

 考えかけたところで首を横に振る。そんなこと、何度も考えたではないか。

 おそらく、城に入ったところで、周囲からは罵詈雑言が浴びせられるのだろうが、今さら気にするようなことでもない。

「姫様、私もお供します!」

「ジゼルを共につれていきたいのですが、よろしいですか?」

「好きにしろ」

 ルディガーはそうでもないのだが、ノエルの鋭い視線がジゼルに突き刺さるのが見えた。

「剣を持つのは許さんぞ」

 ノエルが、そう告げる。

「かまいません——いいわよね、ジゼル」

 不満顔のジゼルがうなずいた。

 扉を塞いでいた家具をずらし、部屋の外に出る。

 長い廊下を歩き、中庭に出た。

 壁は崩れ、あちこちからうめき声が上がり、血の匂いと様々なものが焼けこげる臭いが漂ってくる。

 その凄惨な光景から、目をそむけかける。立ち止まりそうになると、ルディガーはディアヌの腕を引っ張った。

「目をそむけるな。これがお前の行動の結果だ」

「……そむけません」

 緊張のあまり喉が鳴る。わかっている。この凄惨な光景は、ルディガーに絵図を渡した結果だ。

 ——この城に戻ってきたのは、十四になった春だった。それから、二年。

 見たくない光景を何度も見せられることになった。

 父や兄達の機嫌を損ねないよう、常にびくびくしていた城内の者達。

 女性の使用人達は皆、父や兄達の目にとまらないよう、顔を汚し、常にうつむくようにして働いていた。

 ルディガーの手に城を渡すことによって、今後は少し変化してくるのだろうか。自分の行動が正しかったか否か、答えを出すことができるのはもう少し先になりそうだ。