不器用な殉愛


 父である国王、マクシム、兄のジュールにヴァレリアン。彼らがどうなったのか、彼らを売った立場であるディアヌが心配してもしかたがない。

 今は亡きシュールリトン王妃ブランシュは、元は、マクシムが滅ぼしたトレドリオ王国の王妃であった。彼女の美貌に横恋慕したマクシムは、主君を打ち滅ぼし、ブランシュを奪った。

「シュールリトン王家の血なんて、絶えてしまえばいいのに」

「……姫様!」

 咎めるようなジゼルの言葉を聞きながら、ディアヌは自分に強いて笑みを作った。

 ——まだ、死ねない。それはわかっている。荒れ果てたこの国を、安心できる人間にゆだねるまでは。

 自分の身体に流れるのが、呪われている血であったとしても、まだ、役に立てることができる。

 やがて、ディアヌの部屋にやってきたのはルディガー本人だった。ノエルが忠実に彼の側に従っている。

「マクシムをとらえたぞ。それとヴァレリアンも。ジュールには逃げられた」

「そう、ですか」

 吐き出されたため息が表すものは何だったのか、ディアヌ自身にもわからない。安堵か、それとも恐怖か。

「それと、主だった家臣もとらえた。全員の罪を確定させた後、処分を決める」

「私の証言も……必要でしょうか?」

「必要だ、当然だろう」

 ディアヌの持参した絵図は、どうやら役に立ったようだ。少なくとも、ルディガーのこちらを見る目には、昨夜のような疑いはない。

「では、その時が来たら声をかけてください」

「その前に一つ頼みがある。城内を案内してくれ」

 ルディガーの要求に、ディアヌは唇を引き結んだ。